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ナレッジベース連携でチケットを自動解決するHubSpot Breeze Customer Agentの設定ガイド

365Finds Editorial
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製品のアップデート、マーケティングキャンペーン、繁忙期などにより問い合わせ件数が急増すると、カスタマーサポート部門は深刻な運用ボトルネックに直面します。パスワードのリセット、配送状況の確認、返品規定、契約変更といった定型的な質問の対応にオペレーターの手が取られ、初動対応時間(FRT)や平均解決時間(MTTR)が悪化し、高度な技術的支援を必要とする重要案件が滞留してしまいます。こうした課題を抜本的に解決するのが、HubSpotのService Hubに搭載された「Breeze Customer Agent(旧Service Agent)」です。

あらかじめ決められた分岐しかたどれない従来のルールベース型チャットボットとは異なり、Breeze Customer AgentはHubSpot CRMやHelp Deskとネイティブに連携し、検索拡張生成(RAG)を活用して企業のナレッジベース記事、公開ウェブページ、過去のチケット履歴をもとに24時間365日体制で高精度な自律回答を提供します。本稿では、サポート責任者やシステム管理者向けに、Breeze Customer Agentの初期設定、ナレッジの連携、過去の問い合わせデータからのFAQ生成、行動ガイドラインの設定、そして有人エージェントへのシームレスなエスカレーション(Ticket Escalation & Handoff)の構築手順を徹底解説します。


1. 事前要件、権限、および課金モデルの理解

Breeze Customer Agentの設定を始める前に、HubSpotポータルで必要な権限やチャネル連携、クレジット体系が整っているか確認します。


2. 初期セットアップ:エージェントの作成とブランドペルソナ

エージェントのトーン&マナーは、顧客が最初に受ける印象を大きく左右します。

  1. HubSpotアカウントで、Service > Customer Agentに移動します(ナビゲーションバーのMore内にある場合もあります)。
  2. Continue to agent setupをクリックします。
  3. エージェント名の設定:顧客に表示される名称を入力します(例:「Acme サポートアシスタント」)。チャットヘッダーにはPowered by AIの表記が付与されます。
  4. ペルソナ(Personality)の選択:
    • Friendly(親しみやすい):温かみがあり前向きな対応。
    • Professional(プロフェッショナル):簡潔で論理的、フォーマルな文体(B2Bやテクニカルサポートに最適)。
    • Casual(カジュアル):親しみやすく手短な返答。
    • Empathetic(共感的):顧客の感情に寄り添う丁寧な文体(クレームや返品対応向け)。
    • Witty(機知に富んだ):ユーモアを交えた軽快なトーン。
    • Use my brand voice(ブランドボイスを使用):HubSpotのAI Brand Voice設定が構成されている場合、企業全体のトーンガイドラインを継承できます。
  5. マルチブランド対応:HubSpotのブランド機能を利用している企業は、ブランドごとに独立したCustomer Agentを作成し、ナレッジベースや引き継ぎルールを別個に運用できます。

3. ナレッジソースの接続:記事、公開URL、社内ファイル

Breeze Customer Agentは、根拠となる情報源に基づいた回答のみを生成します。

左側メニューのTrain > Knowledgeを開き、Add contentをクリックして情報源を登録します。

A. HubSpot内のナレッジベースとウェブページ

B. 外部の公開URLとサブドメインのクロール

Notion、GitBook、Zendesk、自社開発のドキュメントサイトに情報がある場合:

C. ファイルのアップロード(社内マニュアル・仕様書)

D. ショートアンサー(Short Answers)の作成

季節営業の時間、特定のキャンセル手数料規定など、絶対に文言を崩したくないピンポイントな質問に対しては、Create a short answerから固定のQ&Aペアを作成します。リッチテキスト、リンク、画像の埋め込みが可能です。


4. 解決済みチケットや過去の会話履歴からナレッジを自動生成

ゼロからナレッジベースを作成するには膨大な時間がかかります。そこで有効なのが、AIを活用したGenerate knowledge(ナレッジの生成)機能です。

  1. Train > KnowledgeでAdd content > Generate knowledgeをクリックします。
  2. データ元を選択:
    • Tickets:過去90日間のすべての解決済みチケット(All tickets)、または特定のチケットセグメント(例:「一次サポート解決済み」)を選択。
    • Inbox:特定の受信トレイの過去90日間の会話ログを選択。
    • File upload:過去のチャットログファイルを一括アップロード。
  3. ガードレール(トピック制限)の設定:
    • Include topics(含めるトピック):頻出する問い合わせ(「二段階認証の設定」「請求書の発行手順」など)を指定。
    • Exclude topics(除外するトピック):自動対応に適さないテーマ(「個別値引き交渉」「損害賠償」「幹部向け特例」など)を指定。
  4. Generate knowledgeを実行します。
  5. ドラフトの確認と承認:
    • 数分後に画面上部のバナーにReview draftsが表示されます。
    • AIがトピックごとに整理したQ&Aカードを一覧表示します。
    • 各カードをクリックして質問文や回答文を修正・補足します。
    • Acceptをクリックすると正式なナレッジソースとして登録され、即座に対応に利用されます(Skipで保留、Declineで却下)。

5. コミュニケーションガイドラインと安全境界の設定

エージェントの暴走や誤答を防ぐため、厳格なルールを設定します。

  1. 左側メニューのTrain > Guidelinesに移動します。
  2. コミュニケーションスタイル(Communication style):+ Add Communication styleをクリックし、特定の顧客セグメント(VIP顧客と無料ユーザーなど)ごとにルールを定義します。「トラブルシューティング手順は必ず箇条書きにする」「回答は150文字以内で簡潔に」「未発表のロードマップについては推測で答えない」などの指示を記述します。
  3. ガードレール(Guardrails):エージェントが触れてはならない話題を指定します。競合製品の比較、法的な助言、例外的な値引きなどを尋ねられた場合、「専門の担当者におつなぎいたします」と回答して即座に有人エージェントへエスカレーションするよう指示します。
  4. 右上のTestで動作を確認し、Publishをクリックして反映します。

6. チケットのエスカレーションと有人引き継ぎルールの設計

AIサポート導入で最も重要なのは、「いつ、どのように人間へ引き継ぐか」というエスカレーション設計です。

引き継ぎトリガーの設定

Train > Human handoffを開きます。以下の3つの条件ではデフォルトで有人対応へ引き継がれます:

Handoff guidelinesフィールドでは、独自のキーワードや条件を追加できます:

「顧客が強い不満を示した場合、または『返金』『解約』『セキュリティ事故』『システム障害』『見積もり希望』などのキーワードが含まれる場合は、直ちに有人エージェントへ引き継いでください。」

引き継ぎプロセスの選択(Edit handoff process)

ルーティング先の構成

チケットステータスの管理(Customer Agent ticket status)

エスカレーションの進行に伴い、CRMのプロパティ値が自動更新されます:

ステータス値システム状態サポートチームの対応
Pendingエージェントが顧客と対話中(未引き継ぎ)。オペレーターの介入は不要。
Awaiting Human Assignment引き継ぎが発生しHelp Deskにチケット作成済みだが、担当者未定。未割り当てキューを監視し、手動アサインまたは受領。
Handed off有人オペレーターへの割り当てが正常完了。担当オペレーターがAIの会話ログを確認し、対応を継続。

営業時間とメッセージの自動翻訳


7. 事前テストと段階的ロールアウト

本番展開する前に、検証機能を用いて安全性を担保します。

1. インタラクティブテストとTesting Insights

2. チャネルへの段階的ロールアウト(トラフィック制御)

  1. Deploy > Channelsに移動し、Deploy agentをクリックします。
  2. 対象チャネル(ウェブチャットやサポートメール)を選択します。
  3. Working Hours(稼働時間)を設定:24時間稼働、特定時間のみ、または「営業時間外のみ」(夜間・休日の問い合わせ削減に有効)を選択します。
  4. Conversation coverage percentage(対応比率):最初は**10%〜20%**などの低い比率から開始し、一部のトラフィックのみをAIに誘導します。
  5. メールチャネルでは、Contact lists to include / excludeを使って特定顧客リスト(VIP顧客の除外など)を指定します。
  6. Deployをクリックして公開します。

8. 運用開始後のモニタリングとナレッジの継続的改善

公開後は、Service > Customer Agent > Analyzeのレポートを活用して運用サイクルを回します:

自社ドキュメントの的確な連携、過去ログからのナレッジ抽出、厳格なガードレール、そしてService Hubの洗練されたエスカレーションフローを組み合わせることで、サポートチームは問い合わせ急増のピンチを、顧客満足度と業務効率を両立する絶好の機会へと転換できます。


参考文献