プロフェッショナルなナレーションや動画制作において、機械的な合成音声と人間らしい自然な語りを分ける決定的な要素は、正確な発音、意図的な単語の強調、そして自然な息継ぎを感じさせるポーズ(間)の3点です。現代のAI音声は初期状態でも高品質ですが、ブランド名、業界特有の略語、異音同義語、そして感情豊かなドラマチックな間合いにおいては、依然として微調整が欠かせません。
Lovo.aiの主力動画・音声制作プラットフォームであるGennyでは、ワークスペース上の発音エディター、テキスト内での当て字・音素入力、単語ごとの強調コントロール、そしてマルチトラックタイムラインでの間隔調整を組み合わせることで、極めて自然な口調を作り出すことができます。本記事では、ナレーターや動画制作者がGennyで発音・強調・ポーズを自在に調整する実践的手順と、制作現場において把握しておくべき現状を詳しく解説します。
1. 発音規則の設定と修正手順
Gennyが企業名や専門用語、アルファベット略語を正しく読まない場合、対処法は大きく「内蔵発音エディターの利用」と「スクリプト内での音素表記への書き換え」の2通りがあります。
方法A:内蔵発音エディター(Pronunciation Editor)を使う
Gennyの上部ツールバーには、プロジェクト全体で発音規則を一括管理できる専用の発音辞書ツールが備わっています。
- ツールの起動: プロジェクト画面上部のツールバーにある Pronunciation(発音)アイコンをクリックします。
- 言語とアクセントの確認: ドロップダウンで指定されている言語とアクセントが、使用中のボイスモデル(例:
English (US)やJapaneseなど)と合致しているか確認します。発音規則はロケールごとに独立しており、US英語で作成した規則はイギリス英語や他言語のボイスには自動適用されません。 - 原語と目標発音の入力:
- Source word(元の単語): 台本通りに表記された単語を入力します(例:
LOVO、SaaS、特殊な固有名詞など)。 - Target word(目標の発音): AIが意図通りに発音できるよう、フォネティック(音素通り・カタカナやアルファベットの当て字)で発音を入力します(例:
Lovoe、Sassなど)。
- Source word(元の単語): 台本通りに表記された単語を入力します(例:
- ルールの保存: 右側の + ボタンを押して辞書に登録します。
- 音声ブロックの再生成: 辞書登録後、該当する単語が含まれる音声ブロックに赤いステータスドットが表示されます。各ブロックの Regenerate(再生成)をクリックすることで、新しい発音ルールがオーディオに反映されます。
ボイスモデル別の注意点: 発音エディターは、Gennyの Rapid ボイスや Global ボイスで最も安定して動作します。Pro V2などの一部の最新ニューラル音声では、テキスト内で直接音素表記に書き換える手法の方が確実な結果を得られる場合があります。
方法B:テキストブロック内での直接表記調整
単発の言い回しや、辞書ツールがうまく反映されない場合には、スクリプトのテキストを直接工夫するのが効果的です。
- 音素・当て字での入力: 読み間違えやすい単語を、聞こえる通りのスペルに一時的に置き換えます(例:英語の
AIをAy Eyeと書くなど)。 - 略語の読み分け: アルファベットを1文字ずつ読んでほしい場合はハイフンやピリオドを挟み(例:
U-SやU. S.)、ひとまとまりの単語として読んでほしい頭字語は頭文字のみ大文字(例:Nasa)にします。 - 全大文字入力の回避: 通常の単語を全大文字(ALL CAPS)で入力すると、AIエンジンが略語と判断して1文字ずつ読み上げてしまう原因になります。頭字語以外は通常の小文字やタイトルケースで入力してください。
2. 単語の強調(Emphasis)と抑揚のコントロール
人間らしい自然な発声では、文中の重要キーワード(着地点となる単語)でピッチ(声の高さ)が上がり、母音の長さが伸び、音響エネルギーが増加します。Gennyでは部分的な強調と全体的な抑揚調整の両方が可能です。
エディター内の強調(Emphasis)ツールの適用
- テキストボックス内で、強調したい特定の単語、音節、または短いフレーズをドラッグして選択します。
- ポップアップ表示されるテキスト設定から Emphasis(強調)を選択します。
- 強調のレベルを設定し、選択した単語に付与するアクセントの強さを指定します。
- ブロックを再生成してプレビューし、母音が自然に引き伸ばされ、適切なピッチ上昇が加わっているかを確認します。
速度とピッチの手動微調整(Advanced Mode)
個別の強調ツールだけでは大げさに聞こえてしまう場合、サイドパネルのプロソディ(韻律)パラメーターを併用します。
- 速度を2〜5%落とす: デフォルトのAI音声は早口で明るすぎる印象を与えることがあります。ブロックの再生速度を
0.95xや0.98xにわずかに下げることで、文章全体に落ち着いた呼吸感が生まれ、強調された単語がより説得力を持って響きます。 - Advanced Mode(高度モード)でのピッチ調整: 疑問文の語尾を上げたり、説得力を出すために語尾を低く落ち着かせたりするピッチの微調整が可能です。
- 感情プリセットの選択: Gennyには30種類以上の感情表現スタイル(Professional、Serious、Empathetic、Cheerfulなど)が搭載されています。ビジネスナレーションでは「Empathetic(共感)」や「Authoritative(権威的)」なトーンをベースに選ぶことで、手動で音節をいじることなく自然な強調が得られます。
3. ポーズ(間)の調整と自然な呼吸感の演出
AI音声特有の「機械っぽさ」を解消する最大の鍵は、適切なポーズです。Gennyではテキスト内の「Pauseツール」と「タイムラインでのブロック配置」という2つのアプローチが使えます。
アプローチ1:テキスト内のPauseツールを使う
文中の短い呼吸や句読点の補助に適しています。
- テキストエディター上で間を入れたい位置にカーソルを合わせるか、ツールバーの Pause(ポーズ)アイコンをクリックします。
- ポーズを挿入したい単語を選択します。
- プリセットから選ぶか、0.1秒単位で任意の秒数(例:軽い息継ぎなら
0.2s、文の区切りなら0.5s、緊張感を持たせる演出なら1.0sなど)を入力します。 - Apply を押してブロックを再生成します。
アプローチ2:タイムラインでのブロック分割(プロの推奨手法)
動画制作において最も柔軟で費用対効果が高いのは、タイムライン上でのブロック分割です。
- ブレスライン(息の単位)でテキストを分割: 長文を1つのブロックにまとめず、1つの思考単位や息継ぎごとに短いテキストブロックに分けて入力します。
- マルチトラックタイムラインの活用: 生成された各音声ブロックは、Genny下部のタイムライン上に独立したオーディオクリップとして配置されます。
- 「Snap(スナップ/磁石)」ツールをオフにする: タイムライン上の磁石アイコンをクリックしてスナップ機能を無効化します。これにより、クリップ同士が自動で吸着しなくなります。
- 手動でクリップ間の余白を広げる: クリップをドラッグして、音声と音声の間の空白時間をミリ秒単位で自由に調整します。
- メリット: AIの生成クレジットを消費せず、再レンダリングの待ち時間もなしに、映像のカット変わりやBGMのビートに合わせて完璧な間合いを何度でも追い込めます。
記号による自然なリズムの誘導
秒数を明示的に指定する前に、通常の句読点も有効に活用しましょう。
- カンマ(
,): 約150〜250ミリ秒の自然で日常的な息継ぎを生み出します。 - ダッシュ(
—): 話題の転換や補足説明での鋭い区切りを演出します。 - 三点リーダー(
...): 思考の余韻、ためらい、あるいは期待感を持たせる演出に適しています。
制作効率を高める3段階のワークフロー
生成クレジットの浪費を防ぎ、最短で完成度の高いナレーションに仕上げるための推奨チェックリストです。
- ステップ1:テキスト精査と発音設定
- 専門用語や略語を洗い出し、発音エディターに登録。基本音声を初出レンダリングします。
- ステップ2:速度と強調のブラッシュアップ
- 全体速度を2〜4%落とし、各文の最重要キーワードにEmphasisを適用。長文はブレスラインに分割します。
- ステップ3:タイムライン調整と映像・音響の同期
- スナップをオフにし、映像の動きやBGMに合わせてクリップ間の間隔を手動調整。最終出力を実行します。
運用に関する現状とおすすめの代替ツール
Gennyはタイムライン編集と細やかな音声調整を統合した先駆的ツールとして評価されてきましたが、制作パイプラインを組むにあたっては直近の運営状況に留意する必要があります。2026年5月下旬、ナレーター陣による声の無断利用を巡る集団訴訟(Lehrman v. Lovo, Inc.)の渦中において、運営会社LOVO, Inc.は米国ニューヨーク南区破産裁判所に連邦破産法第7条(Chapter 7:清算型破産、事件番号 1:26-bk-11249)を申請し、プラットフォームサービスは大規模な停止(HTTP 402エラー等によるサービス停止)に見舞われました。
現在、同様の発音辞書機能、単語単位の強調、タイムラインでの細かなポーズ調整を安定した稼働環境で必要とするクリエイターには、以下の現行ツールの利用が推奨されます:
- ElevenLabs: 圧倒的な声のリアリティと豊かな感情表現を備え、発音指定、Speech-to-Speech(音声による抑揚指示)、細かなスタイル調整スライダーを提供。
- Murf AI: 録音スタジオ風のタイムラインを備え、単語ごとのピッチ・速度・強調を視覚的なスライダーで調整可能。映像に合わせた音声調整に極めて強力。
- Castmagic / Speechify: 複数話者の対話コンテンツや、長文コンテンツの多言語音声化において高い処理速度と安定した制作ワークフローを実現。