AI を活用した音声クリーンアップツールは、ポッドキャスト編集における単純作業を大幅に削減してくれます。しかし、音声を完全にレンダリングして1つのファイルに書き出す「破壊的エクスポート」では、重要な子音の頭が削られたり、会話の自然な間や息継ぎが不自然に詰められたりした場合に元に戻せなくなるという大きなリスクがあります。
Cleanvoice は、専用のタイムラインマーカー(Markers)およびタイムライン編集リスト(Timeline / EDL)書き出し機能によってこの問題を解決しています。処理済み音声を固定出力するだけでなく、Edit Decision List(EDL)、Audacity 用ラベルテキスト(.txt)、REAPER 用マーカー CSV(.csv)を出力できるため、Adobe Premiere Pro、Audacity、Cockos REAPER などの主要 DAW / NLE へインポートして、完全に非破壊な環境で微調整や品質確認を行うことが可能です。
マーカー書き出しとタイムライン(EDL)書き出しの使い分け
Cleanvoice は編集支援データを2つのアプローチで提供しています。制作意図に合わせて適切なワークフローを選択することが重要です。
| エクスポート種別 | 併用する音声ファイル | 含まれるデータ内容 | 主な用途とメリット |
|---|---|---|---|
| マーカー書き出し(Markers) | クリーンアップ済み音声(AI処理後) | Cleanvoice がカットや修復を実行した正確な位置 | 素早い品質監査(QA)。AI による誤カットや語頭欠けがないかを素早く確認 |
| タイムライン書き出し(Timeline / EDL) | 未編集の生音声(元録音データ) | カット推奨箇所の開始・終了タイムスタンプ(EDL / CSV / ラベル) | 100% 非破壊な手動編集。エディターが箇所ごとにカットの可否を自ら判断 |
1. マーカーワークフロー(処理後音声の品質監査)
このモードでは、Cleanvoice でノイズや不要音を除去した音声と、マーカーファイルをダウンロードします。DAW に音声を配置してマーカーを重ねると、AI が編集したすべての接合部にフラグが立ちます。エディターはショートカットキーを使ってマーカー間をジャンプ試聴し、部屋の暗騒音(ルームトーン)のつなぎ目や言葉のニュアンスに違和感がないかを短時間で検証できます。
2. タイムライン / タイムスタンプワークフロー(非破壊手動コントロール)
このモードでは、タイムライン上に一切手を加えていない生録音データを配置します。Cleanvoice から書き出したタイムラインファイルは、フィラーワード(えー、あのー、um、uh)、リップノイズ、どもり、長すぎる沈黙の位置を正確に指示します。DAW 上ではこれらが独立したクリップ分割点やラベルとして表示されます。話者の意図的な間や感情表現を残したい場合はそのカットをスキップするだけで、元の音声を一切傷つけずに作業できます。
同期の注意点: 複数人での対談やビデオポッドキャストで単純な「リップル削除」を行うと、他のマイクや映像との間でタイムコードのズレが生じます。Cleanvoice の API / 設定には
mutedオプションがあり、尺を詰めずに該当箇所を無音化(ミュート)して全体の同期長を維持できます。
ステップ 1:Cleanvoice での解析とファイル書き出し
DAW を開く前に、Cleanvoice 上で解析を実行し、必要な編集リストを出力します。
- 元ファイルをアップロード:Cleanvoice 公式サイト(cleanvoice.ai)にアクセスします(登録ユーザーは1ファイル最大 3 GB、新規アカウントには 30 分の無料試用枠が付与されます)。マルチマイク収録の場合は、位相ズレを防ぐため Multi-track 形式でまとめてアップロードします。
- AI モジュールを選択:
- フィラー除去(Filler Words):日本語、英語、ドイツ語、フランス語など 20 以上の言語に対応。
- マウスノイズ除去(Mouth Sounds):唾液音やリップノイズをピンポイントで検出。
- 吃音・言い淀み除去(Stutters):繰り返された音や詰まった語頭を特定。
- 沈黙除去(Dead Air):指定のしきい値を超える不要な空白を検出。
- ブレス制御(Breath Removal):標準モード、
legacy(スタジオ録音向けの控えめな処理)、natural(自然な会話の息遣いを残す軽めの処理)から選択。
- AI 処理を実行:通常、1 時間の音声であれば 5〜10 分程度で解析が完了します。
- エクスポート画面を開く:生成された Download ページで、直接音声を落とすのではなく Export ボタンをクリックします。
- 目的の DAW 形式を選択:
- ビデオポッドキャストや映像連動には Adobe Premiere / EDL。
- Audacity には Audacity ラベルファイル(.txt)。
- REAPER には Reaper マーカー CSV(.csv)または EDL タイムライン。
- ローカルに保存:音声ファイルとエクスポートファイルをプロジェクトフォルダに保存します。Cleanvoice 上のファイルは 7 日後に自動削除されるため注意してください。
ステップ 2:DAW 別のインポートと編集手順
Adobe Premiere Pro:EDL シーケンスとオーディオマーカー
Premiere Pro はビデオポッドキャスト制作の標準ツールであり、標準的な Edit Decision List(.edl)を直接読み込むことができます。
方法 A:EDL を編集シーケンスとして読み込む
- EDL の読み込み:Premiere Pro プロジェクトを開き、ファイル > インポート... から Cleanvoice の
.edlファイルを選択します。 - シーケンス設定の確認:EDL に基づいて新しいシーケンスが作成されます。オーディオのサンプルレートが元の収録(通常 48 kHz または 44.1 kHz)と一致しているか確認します。
- メディアのリンク:読み込み直後のクリップはオフライン状態になっている場合があります。プロジェクトパネルで右クリックし、メディアをリンク... から生録音ファイルまたは Cleanvoice 処理済み音声ファイルを指定します。
- 非破壊編集の実施:
- Cleanvoice が提案したすべてのカット位置が、タイムライン上の独立したクリップ分割点として展開されます。
- 不要なカットを元に戻すには、編集点を選択して
Deleteキー(通過編集を結合)を押すか、リップル編集ツール(ショートカットB) や ローリング編集ツール(ショートカットN) で境界線を前後にドラッグします。 - スリップツール(ショートカット
Y) を使えば、タイムライン上の位置を動かさずにクリップ内の音声タイミングだけを微調整できます。
方法 B:Adobe Audition を経由したマーカー連携
物理的な分割線ではなく、タイムライン上のマーカーフラグとして視認したい場合:
- 音声を Adobe Audition で開き、マーカーパネル(ウィンドウ > マーカー)から Cleanvoice のマーカーリストを読み込みます。
- 音声ファイルを保存すると、XMP メタデータとしてマーカーがファイル自体に書き込まれます。
- この音声を Premiere Pro で開くと、波形上にカラーマーカーが直接表示されます。
Shift + M(次のマーカーへ)やCtrl + Shift + M(前のマーカーへ)で素早くジャンプしながら確認できます。
Audacity:ラベルトラック(Label Track)を活用した非破壊確認
Audacity は EDL シーケンスに直接対応していませんが、強力な「ラベルトラック」機能を備えています。Cleanvoice が書き出す Audacity 用マーカーは、開始時刻、終了時刻、ノイズ種別がタブ区切りで記載されたテキストファイル(.txt)です。
Audacity の操作手順:
- 音声を読み込む:Audacity を起動し、ファイル > 取り込み > オーディオ...(
Ctrl + Shift + I)でポッドキャスト音声を読み込みます。 - ラベルを取り込む:
- ファイル > 取り込み > ラベル... を選択します。
- Cleanvoice からダウンロードした
.txtファイルを選択します。
- ラベルトラックの確認:
- 音声波形トラックのすぐ下に、専用の ラベルトラック(Label Track) が自動生成されます。
- 検出されたフィラーやリップノイズが、左右に調整ハンドルの付いたラベルとして並びます。
- 非破壊的な判定と処理:
Tabキーを押すと次のラベルへ、Shift + Tabで前のラベルへ順次移動できます。- ラベル内をクリックして
SpaceキーまたはBキーを押すと、該当箇所の前後を即座に試聴できます。 - カットする場合:AI の判断通りに削除する場合は、選択範囲を指定して
Ctrl + K(削除)を押します。全体の尺を変えたくない場合はCtrl + L(無音化)でフィラーのみを消去します。 - 残す場合:自然なニュアンスとして残したい場合は、ラベルを選択して Delete キーでラベルのみを削除します。音声データ自体は一切改変されません。
- 境界の微調整:ラベル両端の丸いハンドルをドラッグすることで、選択範囲を広げたり狭めたりして言葉の頭切れを防ぐことができます。
Cockos REAPER:マーカーマネージャーと非破壊アイテム編集
REAPER は、極めて軽量な動作、強力な非破壊スリップ編集機能、高いカスタマイズ性から、プロのポッドキャスト制作者に広く支持されています。Cleanvoice は CSV マーカーおよび EDL による連携に対応しています。
方法 A:リージョン / マーカーマネージャーから CSV を読み込む
- プロジェクトの準備:REAPER を開き、トラック上にポッドキャスト音声を配置します。
- マーカーマネージャーを開く:
- ショートカット
Ctrl + Alt + Shift + R(Windows)またはCmd + Opt + Shift + R(macOS)を押すか、上部メニューの View > Regions/Markers Manager を選択します。
- ショートカット
- Cleanvoice CSV をインポート:
- マネージャーウィンドウ右下の Options ボタンをクリックします。
- Import regions/markers... を選択します。
- ダウンロードした
.csvファイルを指定して読み込みます。
- タイムライン上での確認:
- ルーラー上にフィラー、吃音、リップノイズを示す色分けされたマーカーが展開されます。
](次のマーカー)および[(前のマーカー)キーで、瞬時に各ポイント間をジャンプできます。
方法 B:EDL 読み込みによるアイテム分割と非破壊調整
Cleanvoice の EDL を REAPER に読み込んだ場合:
- 音声トラックが AI の決定点ごとに自動分割され、独立したオーディオアイテム(Items)として配置されます。
- REAPER は完全な非破壊アーキテクチャを採用しているため、アイテムを分割しても元の音声データは一切失われません。
- 音声の復元:アイテムの端にマウスを合わせ、トリムカーソルが表示された状態で外側にドラッグするだけで、削られた息継ぎや語尾を自在に引き戻せます。
- 自動クロスフェード:アイテム同士を重ねると、デフォルトで等パワー・クロスフェードが自動適用され、カット時のクリックノイズが発生しません。
- スリップ編集(Slip Editing):
Altキー(Windows)またはOptionキー(macOS)を押しながらアイテム内をドラッグすると、タイムライン上のクリップ枠を固定したまま、内部の音声波形だけを前後に滑らせてタイミングを微調整できます。
ポッドキャスト整音のプロが実践する注意点
- マルチマイクの位相ズレ防止:同一空間で複数人のマイクを立てている場合、マイク間の音の回り込み(ブリード)が生じます。話者 A のみリップル削除を行い話者 B をそのままにしておくと、会話の位相が乱れてしまいます。Cleanvoice の Multi-track 解析を使用するか、DAW 内で「尺を詰めずに無音化する」処理を徹底してください。
- すべてのブレスを消し去らない:呼吸音が完全に排除された声は機械的で、リスナーに心理的な圧迫感を与えます。Cleanvoice の
naturalブレスモードを選択するか、DAW のマーカー確認時に熱のこもった発言の前の自然な吸気は残すように判断してください。 - ルームトーンの敷設:長めの無音部分を完全にデジタルゼロ(完全無音)にすると、リスナーは通話が切れたような違和感を覚えます。編集用プロジェクトの別トラックに、10秒程度の微弱なルームトーンをループ再生させて敷いておくと、全体のつながりが滑らかになります。
- フレームレートの厳密な一致:Premiere Pro に
.edlを読み込む際は、シーケンスのフレームレート(24 fps、25 fps、29.97 fps など)が元映像と完全に合致しているか確認してください。フレームレートに差異があるとタイムコードの計算誤差が蓄積し、長時間の収録では後半にかけて編集点がズレる原因になります。